古川 元久 ふるかわ もとひさ
衆議院議員(愛知2区選出)
1965年愛知県名古屋市生まれ。86年司法試験合格、88年東京大学法学部卒業、大蔵省(現財務省)入省。93年米国コロンビア大学院留学(国際関係論)。94年大蔵省を退官、政治家を志し活動開始。96年衆院選挙で初当選。民主党政権時に内閣官房副長官、初代の内閣官房国家戦略室長、国家戦略担当大臣兼内閣府特命担当大臣(経済財政政策、科学技術政策、宇宙政策担当)などを歴任。現在、党代表代行、コミュニケーション戦略本部長。

「軽減税率」は、不公平と混乱を招く税制

− 古川さんは、現在の政治の問題点はどこにあるとお考えですか?
古川元久(以下、古川) 今、与党は盛んに「アベノミクス*1により経済状況は回復している」と主張しています。でも私には、日銀にお札をどんどん刷らせて、そのお金で経済や株価を底上げしているだけで、日本社会が直面している人口減少などの根本的な問題への取り組みは先送りにし、次世代にツケを回しているだけのように思えます。政治は「今さえよければいい」というものではありません。次世代のことを考え、将来を見越した政策を行っていくべきです。
こくみんメモ*1
自由民主党の安倍晋三首相が2012年に展開した経済政策。安倍の姓と「エコノミクス(経済学)」を掛け合わせた造語で、金融や財政などにまつわる“三本の矢”と呼ばれる政策を行った。経済成長率として、国内総生産が導入前から12.2%(60兆円)伸びたと安倍首相はしているものの、数値自体が誇張の指摘を受けたり、一般家庭では特に経済成長の効果を感じていないことが指摘されている。
− 例えばどんな政策に懸念を感じていますか?

古川 私がこれまでずっと取り組んできた税制でいえば、2019年10月から施行予定の消費税増税に伴って導入される「軽減税率*2」です。「軽減税率」の導入は、国民や事業者を大変混乱させるだけでなく、将来に禍根を残すことになると思います。 消費税は低所得者ほど負担感が大きいという「逆進性」があるので、この逆進性緩和のための政策として「軽減税率」を導入するというのですが、「軽減税率」は実際には低所得者より高所得者の方にメリットのある施策です。「軽減税率」の対象である食料品の消費で考えれば、高所得者の方がより多く、かつ高単価の食料品を買うため、減税の恩恵は大きいんです。 また今回「軽減税率」の対象となった食料品と宅配の新聞ですが、なぜこれらが軽減対象になったのか根拠や軽減対象かどうかの基準も曖昧で、非常にわかりづらい。同じ食べ物でもお店で食べると10%、テイクアウトにすると8%、同じ新聞なのに宅配だと8%、駅で買うと10%。同じものなのにどうして税率が違うのか、理解できません。

そもそも、1989年に消費税が導入される前には、“贅沢品”にのみ税金をかける「物品税*3」が施行されていました。例えば宝石や革製品、コーヒーには税金がかかり、緑茶や庭石にはかからなかった。“贅沢品”に課税することになっていたのですが、「何が“贅沢品”か」を判断するのが難しく、実際には「政治力の強さで課税されるかされないか決まる」といった不公平さも指摘されていました。消費税が導入された背景には、こうした判断の難しさや不公平さをなくすことがありました。
「軽減税率」の導入によって、物品税の時と同じような問題が起きてしまうんですね。

こくみんメモ*2
「軽減税率」について:2019年10月1日より実施予定の、消費増税に伴って導入される新しい仕組み。ほとんどの消費税率は10%に引き上げられるが、一部の生活必需品は「軽減税率」として8%に据え置きになる。軽減税率の対象品目は、酒類・外食を除く飲食料品や、週2回以上発行される新聞など。ただし新聞は、定期購読契約に基づく宅配新聞のみ対象で、駅の売店やコンビニ、電子版での購入は対象外となる。
こくみんメモ*3
消費税が導入される前の制度で、特定の物品やサービスを対象に課される個別間接税。自動車や電化製品、ゴルフ用品、毛皮製品、宝石類等に課税されていて、生活必需品は非課税だった。

新たな「社会保障と税の一体改革」で、すべての国民に安心を提供

− 税や社会保障のあり方について、古川さんはどうあるべきだとお考えですか?
古川まず税は公平・中立・簡素であることが重要だと思います。公平で、経済活動にできるだけ干渉せず、できるだけわかりやすい仕組みであるのが望ましい税制です。
また社会保障は、これまでのような年齢による区別ではなく、年齢にかかわらず一人ひとりの置かれている状況に応じて、きめ細かな保障を行う仕組みに変えていくべきです。また最低限の保障はすべての人に公平に提供されるようにすべきです。
こうした新しい形の社会保障制度の仕組みと、それを支える財源をどう確保するのかについて、一体的に検討し、パッケージで実行に移していく。そんな、新たな「社会保障と税の一体改革」の実現を国民民主党は目指します。
− 古川さんの政治家としてのスタンスを教えてください。
古川私が目指すのは「知足社会の実現」です。人は一人では生きていけません。私は「足るを知る(知足)」ことで、人は他者への思いやりの気持ちを持つ心の余裕が生まれてくると思います。誰もがお互いに他を思いやるようになれば、そこに真の共生社会が実現します。そのためにも、まずは自らが「知足」を実践していきたいです。
また、政治のステップとして理想的なのは、私の郷土が生んだ戦国三英傑(織田信長・豊臣秀吉・徳川家康)が「戦国の世」から江戸の「泰平の世」を作り出したようなかたちで進められることですね。初めは信長のように“新しい価値を作り出して社会を改革”し、次に秀吉のように“社会の仕組みや地盤を固め”、最後は家康のように“安定的に持続する社会”を作っていく。現代でもこれらの要素は大切なことです。
− 政治も毎日が戦のようなものですよね。その中で、息抜きの時間はあるのでしょうか?
古川わが家の愛犬・チワワのハッピーとたわむれる時間が、いまは一番の癒しタイムです(笑)。そのおかげでメリハリと緊張感を持って政治活動に当たれていると思います。
これからも国民の目線に立ち、次世代のために力を尽くしたいです。